将棋のプロ棋士は誰もがタイトル獲得に向けて、日々、自己研鑽を行い、激しい対局を繰り広げています。その中で勝ち抜いて来た棋士がタイトルを獲得し、タイトルホルダー(タイトル保持者)になることが出来ます。
そこまでして大勢の棋士が必死にタイトルを取るのには、単なる栄誉やタイトルの賞金だけではありません。タイトルホルダーになると色々なメリットがあるのです。
タイトルホルダーになるとどんなメリットがあるのか
将棋界にはタイトルと言われる棋戦が8つあります。
- 竜王戦
- 名人戦・順位戦
- 叡王戦
- 王位戦
- 王座戦
- 棋王戦
- 王将戦
- 棋聖戦*1
他にも棋戦がありますが、上記の8つのタイトル戦以外は一般棋戦と呼ばれています。タイトル戦の番勝負で勝ち越すと、タイトル獲得となり、肩書きを名乗れます。そしてタイトルホルダー(タイトル保持者)は、タイトルの名誉と賞金を獲得することが出来るのです。しかし、タイトルホルダーは名誉と賞金以外にもメリットを得ることが出来ます。大きくは3つのメリットがあります。
- トーナメント棋戦のシード獲得
- メディア露出が増える
- イベント出演が増える
その他にも色々とメリットがあると思いますが、本記事では上記3つで挙げたメリットについて解説します。
トーナメント棋戦のシード獲得
タイトルホルダーは将棋界のトーナメント形式で行われるタイトル戦・一般棋戦のシード権を獲得することが出来ます。シード対象とシード内容は以下の棋戦です。
- 叡王戦:本戦からの参加シード
- 王座戦:挑戦者決定トーナメントからの参加シード
- 棋王戦:挑戦者決定トーナメントからの参加シード
- 王将戦:2次予選からの参加シード
- 棋聖戦:決勝トーナメントからの参加シード
- 朝日杯将棋オープン戦:本戦or2次予選からの参加シード
- 銀河戦:ブロック戦からの参加シード
- NHK杯テレビ将棋トーナメント:本戦2回戦からの参加シード
- 将棋日本シリーズ:2回戦シード
一部棋戦ではタイトルホルダーであってもシードから除外される可能性もありますが、基本的にはタイトルホルダーは上記のシードを持っています。
尚、名人戦(順位戦)・竜王戦・王位戦はタイトルホルダーのシードはありません。名人戦は仕組み上、順位戦を勝ち抜いてA級に在籍してA級順位戦で優勝して初めて挑戦可能なためタイトルホルダーであっても優遇はありません。竜王戦や王位戦はトーナメント形式ですが、タイトルホルダーのシードが無いため、ジャイアントキリングが発生しやすい面白さもあります。
メディア露出が増える
タイトル戦になると複数のメディアが、タイトル戦開催中の速報や対局結果、そしてタイトル獲得・防衛などを取り上げます。新たなタイトルホルダーが登場すると、その棋士のメディア露出が増えます。
将棋関連のメディア露出で言えば、将棋専門誌や対局の大盤解説、中継解説などに呼ばれることが多くなります。将棋ファンもタイトルホルダーが対局以外の場で登場することで喜ぶので、将棋関連のメディアは積極的にタイトルホルダーを起用します。
将棋関連以外でのメディア露出は、昨今の将棋ブームもあって、CMやバラエティー番組の出演、新聞や週刊誌の取材などがあります。色々なメディアで将棋は注目されており、特にタイトルホルダーはメディア露出が多くなっています。
メディア露出が増えると本業の将棋での対局料以外での収入も入ってくるので、タイトルホルダーの恩恵は大きいでしょう。
イベント出演依頼が増える
特に将棋関連のイベントに限定して言いますと、イベントの出演依頼が増えます。日本将棋連盟は将棋の普及を目的としていますので、プロ棋士は対局以外にもイベント出演という仕事に参加することも多いです。そうなると、イベント開催側としては知名度の高い棋士に出演して欲しいので、タイトルホルダーに話が回ってきやすくなります。
将棋関連のイベントは、多くの人に参加してもらった方がイベント収益も出ますので、タイトル称号の肩書きを持つ棋士がいた方がイベントの注目度も高まるため、タイトルホルダーを積極的に起用します。
もちろん、イベント出演にはギャラが支払われるので、タイトルホルダーの方がやはり稼ぎやすいと言えるでしょう。
編集後記
多くの棋士が必死になってタイトル獲得を目指すのは栄誉と賞金だけではなく、今回紹介したようなメリットがあるのです。ただし、将棋界のタイトルは8つだけなので、相当な努力をしないと、そのメリットを享受することが出来ません。
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*1:正式名称はヒューリック杯棋聖戦