将棋界には序列というものがあります。
「タイトル戦の序列」と「棋士の序列」の二つの序列です。
それぞれの序列には決め方があります。
タイトル戦の序列
タイトル戦の序列は、契約金の金額(優勝賞金や対局料)によって決まります。将棋のタイトル戦はスポンサーありきで成り立っているため、スポンサーがたくさんお金を出しているタイトル戦を上の序列にしています。
2021年現在、タイトル戦の序列と賞金は次の通りです。
序列 | タイトル | 主催 | 賞金 | 推定賞金 | 同スポンサー 囲碁タイトル戦 |
1 | 竜王 | 読売新聞社 | 4,400万円 | – | 棋聖戦 |
2 | 名人 | 毎日新聞社 朝日新聞社 |
非公表 | – | 名人戦 |
3 | 王位 | 新聞三社連合 神戸新聞社 徳島新聞社 |
非公表 | 1,300万円 | 天元戦 |
4 | 叡王 | 不二家 | 非公表 | – | |
5 | 王座 | 日本経済新聞社 | 非公表 | 1,400万円 | 王座戦 |
6 | 棋王 | 共同通信社 | 非公表 | – | |
7 | 王将 | スポーツニッポン新聞社 毎日新聞社 |
非公表 | – | |
8 | 棋聖 | 産経新聞社 | 非公表 | 700万円 | 十段戦 |
賞金額を公表しているのは読売新聞社主催の竜王戦だけで、他のタイトル戦については非公表とされています。
上記の表では、推定金額を記載していますが、将棋のタイトル戦と主催者が同じ囲碁のタイトル戦の賞金額と合わせています。
棋士の序列
棋士の序列の決め方ですが、次の順番で序列が決まります。
- 竜王か名人であること
- タイトル保持者であること
- 永世称号資格者であること
- 段位順(同段位の場合は昇段順)
1.竜王か名人であること
まず、序列の最優先は竜王か名人であることです。
竜王と名人がそれぞれ別の棋士の場合、竜王と名人が序列1位となります。
ただし、竜王と名人は同格ですが、序列的には棋士番号が優先されます。
竜王保持者の方が名人保持者よりも棋士番号が若い場合(先にプロになった場合)、
- 1位:棋士A(竜王)…棋士番号111番
- 2位:棋士B(名人)…棋士番号112番
となりますが、逆に、名人保持者よりも竜王保持者の方が棋士番号が若い場合は、
- 1位:棋士X(名人)…棋士番号222番
- 2位:棋士Y(竜王)…棋士番号223番
となります。
そして、竜王と名人は他のタイトル保持者よりも別格なので、極端に言えば、次の様なケースでも、竜王と名人が優先されます。
- 1位:棋士A(竜王)…棋士番号111番
- 2位:棋士B(名人)…棋士番号112番
- 3位:棋士C(他のタイトル全て保持=六冠)…棋士番号99番
また、竜王と名人がそれぞれ別の棋士で、それぞれが他のタイトルを複数保持している場合、タイトル数が多い順に序列が決まります。
- 棋士A:名人・王位・王座・王将
- 棋士B:竜王・棋王
この様に、竜王と名人は他のタイトルよりも別格で、竜王と名人を比べる場合、棋士番号かタイトル保持数で序列が決まります。
タイトル保持者であること
次に、竜王と名人以外のタイトル保持者の序列です。
まず、タイトルを複数保有している棋士が序列上位になります。
- 棋士A:叡王・王将・棋聖
- 棋士B:王位・王座
この場合、タイトルの序列3位を保持している棋士Bでも、タイトル保持数が多い棋士Aの方が序列が上位になります。
また、タイトル保持数が同数の場合は、タイトルの序列で棋士の序列が決まります。
- 棋士X:王位(タイトル序列3位)
- 棋士Y:王座(タイトル序列4位)
棋士Aと棋士Bともにタイトルを1つ保持しています。この場合、タイトル序列が上位である王位を保持している棋士Aが上位の序列になります。
例えば、二冠を保持している棋士が複数いた場合も同じで、
- 棋士Z:王位(タイトル序列3位)・棋聖(タイトル序列8位)
- 棋士W:王座(タイトル序列4位)・棋王(タイトル序列5位)
タイトル序列が3位の王位を保持している棋士Zが上位の序列になります。
永世称号資格者であること
タイトル保持者の次の序列に位置するのは、永世称号資格者であることです。
永世称号は原則として引退後に名乗ることが出来るので、現役棋士の間は九段を名乗っていることになります。ただし、九段の棋士よりも上位の序列になります。
また、永世称号資格者が複数いる場合は、先に永世称号資格を取得した棋士が序列上位になります。
2021年現在、現役棋士のうち、もっとも早く永世称号資格を取得したのは羽生善治九段です。1995年に永世棋王の永世称号資格を取得しました。
その次に永世称号を取得したのは谷川浩司九段で、1997年に永世名人の永世称号資格を取得しました。
棋王と名人の序列を見れば、名人の方が序列が上位になりますが、永世称号に関しては、どんなタイトルでも良いので永世称号を取得した順番で、序列が上位になります。
段位順(同段位の場合は昇段順)
そして最後に序列を決めるのは段位順です。
ただし、段位を名乗っている棋士は複数いるので、同じ段位でも序列を決める必要があります。
その場合、早く昇段した順に序列が決まります。
仮に、次の様な棋士がいたとします。
- 棋士A九段:タイトル経験無し、2015年4月1日に勝数規定で九段に昇段
- 棋士B九段:タイトル経験あり(竜王6期・名人4期・王位9期・王座9期・棋王4期・王将9期・棋聖4期、いずれも獲得は通算で連続獲得無し)、2015年4月2日にタイトル3期で昇段、現在保有タイトル無し
極端な話ですが、この場合、棋士Aが序列上位になります。
タイトル獲得数45期という、どれだけ棋士Bが輝かしい実績を持っていても、棋士Bは残念ながら永世称号資格を取得していません。
そのため、棋士Aが棋士Bよりも1日前に九段になっているため、段位の序列では棋士Aが上位になります。