囲碁界には序列というものがあります。「タイトル戦の序列」と「棋士の序列」の二つの序列です。
それぞれの序列には決め方があります。
タイトル戦の序列
タイトル戦の序列は、契約金の金額(優勝賞金や対局料)によって決まります。
囲碁のタイトル戦はスポンサーありきで成り立っているため、スポンサーがたくさんお金を出しているタイトル戦を上の序列にしています。
序列 | タイトル | 主催・協賛・後援 | 賞金 | 備考 |
---|---|---|---|---|
1 | 棋聖 | 読売新聞社 | 4,300万円 | 34期~46期までは賞金4,500万円。 大三冠対象の三大棋戦(三大タイトル) |
2 | 名人 | 朝日新聞社(主催) 明治(協賛) マニフレックス(特別協賛) |
3,000万円 | 大三冠対象の三大棋戦(三大タイトル) |
3 | 本因坊 | 毎日新聞社(主催) 大和証券グループ(協賛) |
2,800万円 | 大三冠対象の三大棋戦(三大タイトル) |
4 | 王座 | 日本経済新聞社 | 1,400万円 | |
5 | 天元 | 新聞三社連合 ・北海道新聞社 ・中日新聞社 ・神戸新聞社 ・徳島新聞社 ・西日本新聞社 |
1,200万円 | 48期までは賞金1,300万円。 |
6 | 碁聖 | 新聞囲碁連盟 | 800万円 | |
7 | 十段 | 産経新聞社(主催) 大和ハウス工業(協賛) |
700万円 |
序列1位~3位の棋聖戦・名人戦・本因坊戦を三大タイトル(三大棋戦)と呼び、三大タイトルを同時に保持している棋士を大三冠と呼ぶことがあります。
尚、大三冠を達成したのは、2022年3月現在で、趙治勲氏(二十五世本因坊)と井山裕太氏の二名のみです。
棋士の序列
棋士の序列の決め方ですが、次の順番で序列が決まります。
- タイトル序列で上位を保持している
- 名誉称号保持者(タイトル序列順)
- タイトル獲得経験者(タイトル序列順)
1.タイトル序列で上位を保持している
まずはタイトル序列で上位のタイトルを保有していることが序列の最上位基準です。
複数タイトルを保有していても、タイトル序列が上位のものを基準とします。極端ですが、
- 棋士A:棋聖
- 棋士B:その他七大タイトルの6冠を保持
の場合は、棋士Aが序列1位になります。
将棋の様に、竜王と名人を同格に扱ってややこしいことになることはありません。タイトル序列の上位を保有していれば序列上位と言うシンプルな基準となっています。
2.名誉称号獲得者(タイトル序列順)
タイトル保有者以外の次に序列が高いのは名誉称号獲得者です。
名誉称号獲得者が複数名いた場合、上位タイトルの名誉称号獲得者の方が序列が上になります。
2022年3月時点で、日本棋院の段位順棋士一覧では、小林光一九段が九段位で最上位となっています。
七大タイトルの獲得数は、趙治勲九段が42タイトルで、小林光一九段の35タイトルよりも多いですが、名誉称号は小林光一九段がタイトル序列1位の名誉棋聖を獲得しているため、序列が上となります。
極端な例で言うと、
- 棋士X:名誉棋聖(現在九段で保有タイトル無し)
- 棋士Y:名誉棋聖以外の全タイトルで名誉称号獲得(現在九段で保有タイトル無し)
の場合、棋士Xの方が序列が上となります。
3.タイトル獲得経験者(タイトル序列順)
タイトル保有者・名誉称号獲得者の次に序列が高いのは、タイトル獲得経験者です。これもタイトル序列順になります。
3-1.獲得数よりも序列上位獲得経験
タイトル獲得経験者の場合、獲得合計よりも、序列上位のタイトルを獲得した方が序列が上となります。
小林覚九段と依田紀基九段の例で比較してみます。
小林覚九段は七大タイトル獲得合計が2期、依田紀基九段は七大タイトル獲得合計が12期です。タイトル獲得合計数だけで見ると、依田紀基九段の方が序列上位と考えられますが、序列上位は小林覚九段です。
これは、小林覚九段が棋聖を1期獲得しており、依田紀基九段が棋聖の獲得経験が無いためです。
3-2.同序列の七大タイトル獲得の場合は同タイトルの獲得数
また、序列が同じタイトルの獲得経験がある場合は、七大タイトル合計獲得数よりも、獲得経験のある序列最上位タイトルの獲得数が基準となります。
これは、棋聖の獲得経験がある、山下敬吾九段と張栩九段の例が分かりやすいです。
山下敬吾九段はタイトル獲得合計は23で、張栩九段のタイトル獲得合計は41です。タイトル獲得数だけ見れば、張栩九段の方が序列上位と思えますが、日本棋院の序列では山下敬吾九段の方が序列上位となっています。
これも過去に獲得したタイトル序列上位の獲得数によるものです。山下敬吾九段と張栩九段はともに序列1位の棋聖を獲得した実績がありますが、山下敬吾九段は棋聖5期、張栩九段は棋聖3期という実績です。そのため、棋聖獲得数の多い山下敬吾九段が張栩九段よりも序列が上となっています。