銭闘とは、プロ野球における球団と選手による熱い年俸交渉のこと。
球団が提示した年俸に対して選手が納得すれば銭闘は発生しないが、球団の査定に納得いかない場合、選手が闘いを挑むことになる。
銭闘とは?
銭闘とは、プロ野球のシーズンオフ中に行われる契約更改で、球団と選手の間で繰り広げられる熱いバトルのことです。
契約更改は、
- 選手:出来るだけ年俸を上げたい(下げたくない)
- 球団:コスパよく選手を使いたい(安く使いたい)
という大前提の構図があるので、必然的に銭闘が発生する環境(原因)です。
選手と球団との間で認識のズレがある場合、銭闘力の高い選手(銭闘民族)であれば、自分の希望に沿った年俸を球団に要求して認めさせます。
どうしても選手と球団の間で交渉が平行線になった場合、2月のキャンプに選手が自費で参加する等、徹底抗戦を見せる選手もいます1。
銭闘の例
福留孝介
福留孝介氏は、日本プロ野球界で屈指の銭闘を誇り、かつては黄金銭闘士とも呼ばれました。
2006年の契約更改で、
「誠意は言葉ではなく金額。」(評価は言葉じゃなく金額)
「額を見た瞬間?言葉が出ません。あぜんとしたかな。球団からの提示は自分(の希望)と大きくかけ離れていた。久々にあきれました。」
とコメントしたことはあまりにも有名です。
2006年の福留孝介氏は、打率.351・31本塁打・104打点・出塁率.438・OPS1.091という抜群の成績を残し、タイトルも首位打者・MVP・ベストナイン・ゴールデングラブ賞を獲得しました。
契約更改では年俸4億円を希望しましたが、球団提示の年俸は3億8,000万円。球団としては、「岩瀬仁紀(3億9,000万円)とのバランスを考慮して査定する」「岩瀬を超える金額は出せない」というスタンスのため、球団側も譲らずに、福留氏は自費でキャンプインすることに。
最終的に、3億8,5000万円でサインしましたが、福留氏は、
「ユニホームを着て野球したいのでサインしました」
と明らかに球団に対する不満を見せて、翌年にFA宣言してメジャーリーグに移籍しました。
この時の「誠意は言葉ではなく金額」という伝説的なコメントは、契約更改の時期になると引き合いに出されることが多いです。
杉内俊哉
福岡ソフトバンクホークス時代の杉内俊哉氏は、隔年で活躍する選手と言われていましたが徐々に安定して、ホークスのエースとして成長しましたが、銭闘力も順調に育っていました。
2010年の契約更改で、
「(交渉の冒頭)1年間の労をねぎらう言葉もなかった。携帯電話会社と同じですよ。新規加入の人には優しくて既存の人はそのまま」
というセンスある痛烈なコメントを出しています。
確かに4年連続2桁勝利で1年間ローテーションを守り、ホークスのエースとして申し分ない成績を残していますが、球団としては年俸の高騰を避けたいところでした。
翌年、杉内氏はFA宣言します。しかも、アジアシリーズ決勝戦の日に。
ホークスの査定方法にケチをつけたり、他の選手を引き合いに出したりするなど、あの手この手を使った(というか色んなところで不満をぶちまけた)結果、ホークスとは険悪になってしまい、当時、ホークスの球団取締役からは「FAしても獲得する球団はない」と痛烈なコメントを言われていました。
FAで手を上げて4年20億という破格の条件を出した巨人に対しても、45歳までの雇用を条件に突きつけるなど、まさに黄金銭闘士の名に恥じない銭闘力の高さを見せつけています。
しかし、2015年オフには年俸4億5,000万円からの90%減額した5,000万円を自ら申し出るなど、年齢を経るにつれて落ち着いたのか、怪我をした自分の状態を冷静に見直したのかわかりませんが、かつての黄金銭闘士の姿はありませんでした。
その他の銭闘
まだまだ銭闘には有名なものがあります。
「ショックで震えることってあるんですね。金額を見た瞬間に足がガクガクになりました」
―2006年、中日ドラゴンズ・井端弘和
「もらった祝儀袋の中身が図書券だった感じ」
―2005年、横浜ベイスターズ・佐伯貴弘
「僕、ハワイで夢を見ました。球団から『低姿勢でいてくれたら、金額を上げてやる』って」
―2007年、中日ドラゴンズ・荒木雅博
「この季節になると急に頑張る人がいるが、それならシーズン中にグラウンドで頑張れといいたい」
―2006年、西武ライオンズ球団代表・黒岩彰氏
球団側の対策
球団側としても査定項目があります。
巨人や阪神などはどんぶり勘定と言われており、査定がガバガバなことで有名ですが、広島東洋カープや北海道日本ハムファイターズはとても細かい査定項目を用意しており、そこまでされたら選手としても特に何も言えない状態。ただし、これがアダとなり、広島や日本ハムで活躍した選手はFA流出しやすい温床にもなっています。
また、広島には銭闘民族最大の敵と呼ばれる鈴木清明球団本部長が控えており、その交渉手腕をもってして多くの選手に提示年俸を納得させています。それでも、FAによる主力選手の流出は止まらないのですが。