野球には指名打者制度というものがあり、野球の試合で、投手が打席に立つ代わりに、守備にはつかない打者が打席に立ちます。プロ野球ではパ・リーグで、メジャーリーグ(MLB)ではアメリカン・リーグ(ア・リーグ)が指名打者制度を採用しています。
この指名打者ですが、2011年5月20日のオリックス・バファローズvs広島東洋カープの試合で、ちょっとした事件が起こりました。
DH今村
DH今村とは、2011年5月20日のオリックス・バファローズvs広島東洋カープの試合で、7番・指名打者としてスタメン登録された今村猛(いまむら たける)のこと。
当日のスタメン
2011年5月20日の広島東洋カープのスタメンは次の様になっていました。
打順 | 選手 | ポジション |
1 | 梵 | ショート |
2 | 東出 | セカンド |
3 | 廣瀬 | ライト |
4 | トレーシー | サード |
5 | 栗原 | ファースト |
6 | 丸 | センター |
7 | 今村 | DH |
8 | 石原 | キャッチャー |
9 | 天谷 | レフト |
P | バリントン | ピッチャー |
今村は投手登録の選手であり、前年度の打撃成績は2打数0安打と、ほぼ打席に立っていない状態です。高校時代、春の選抜で選抜大会通算600号のメモリアル本塁打を打った実績もありますが、もちろん本職は投手。
では何故か。
投手である今村が7番・指名打者でスタメン登録された理由は偵察要員です。
偵察要員と言うのは、相手チームの先発投手が発表され、試合開始後に交代するための選手です。これは、相手チームの先発投手が分からない場合に用いられる戦術の一つで、相手チームの先発投手が左投手であれば、試合開始直後に偵察要員を右打者と交代させます。
※現在のプロ野球においては、セ・パ両リーグで予告先発を採用しているため、偵察要員は使われていません。
そして、偵察要員として7番・指名打者で今村がスタメン登録されたこの試合、今村に打席が回って来た時に、そのまま打席に立ちました。
指名打者は打席に立つ必要がある
交代されるはずの偵察要員なのですが、この時、何故、偵察要員の今村が打席に立ったかというと、野球規則にこう定められているためです。
(2)試合開始前に交換された打順表に記載された指名打者は、相手チームの先発投手に対して少なくとも1度は、打撃を完了しなければ交代できない。ただし、その先発投手が交代したときは、その必要はない。
―公認野球規則 5.11(a)
ちょっと難しく書かれていますが、もう少し簡単に言うとこうなります。
スタメン登録された指名打者は、相手先発ピッチャーと最低1打席は対戦しないといけないよ!
だけど、相手先発ピッチャーが変わったら代打してもいいよ!
今村はスタメン登録された指名打者です。対戦相手のオリックスの先発投手は木佐貫です。今村の打席が回ってくるまで、木佐貫は交代することなく投げ続けています。つまり、今村は打席に立つ必要があります。
今村の打撃結果
ちなみに、今村が打席に立った結果、キッチリと送りバントを決めました。
甲子園でホームラン打った実績があるからか、バントも上手ですね。普段から練習はしてそうですが。
DH今村の原因
ところで、DH今村の原因は何なのかと言うと、当時の広島東洋カープの野村謙二郎監督のミスです。
試合前のスタメン交換で、対戦相手であるオリックス・バファローズの岡田彰布監督が広島のスタメンを見た時に指摘。その時に野村監督が初めて指名打者のルールを認識。偵察要員としてスタメン登録したにもかかわらず、指名打者だったため、打席に立ったのでした。
直接の原因はミスですが、指名打者についての正しい認識が野村監督には無かったように思えます。確かに、指名打者制度はパ・リーグにしかありませんが、野村監督は就任2年目で、2010年の交流戦の経験もあります。野村監督自身、自分のミスであることを認めてはいますが…。
編集後記
コーチ陣も指摘してあげれば良いのに…
関連リンク
2011年 オリックス・バファローズ – スタメンデータベース
【広島】なぜ!?偵察要員今村が打席に… – プロ野球ニュース : nikkansports.com(インターネットアーカイブ)