システムエンジニアは給料が高いと言われていますが、そんなことはありません。色々な職業の方とお会いして「SE(システムエンジニア)さんって給料高いですよね」と何度も言われました。確かに、高い人は高いですが、SESという業務形態で働いている状態では給料は低く、なかなか上がらないのが現実です。何故、SESエンジニアの給料が安く、そして上がらないのかを今日は紹介したいと思います。
単価と給料の関係
超概説
IT業界、特にSESのエンジニアは「単価」という単語を頻繁に耳にします。他の業界ではなかなか耳にしないと思いますので、まずは「単価」から説明します。
単価というのは、「エンジニアの値段」です。例えば、「月単価60万円」という場合は、「一ヶ月働かせたら60万円」という意味で、お客様がエンジニアを1人ご所望の場合、単価とエンジニアを引き換えに契約が成立します。お客様というのは元請けIT企業です。元請けIT企業がSES会社のエンジニアを「発注」します。SES会社はエンジニアを派遣して客先常駐させます。その対価として、元請けIT企業がSES会社に一ヶ月60万円を支払います。
元請けIT企業「これくらいのスキルのエンジニア1人欲しい」
SES会社「月単価60万円でどうぞ。おいエンジニア、行け」
エンジニア「はい」
上記のような会話は雑過ぎますが、だいたいこんな感じです。スキルアンマッチを防ぐために面談がありますが、今回は省きます。そして、この月単価60万円というのはエンジニアの値段であって給料ではありません。元請けIT企業から頂いた60万円は、SES会社の諸経費にまず回されます。そしてその後にエンジニアの給料として支払われます。
実際のSESエンジニアの給料
会社によって異なりますが、大体は単価の半分くらいと考えて頂いて問題無いです。月単価60万円の場合、半分の約30万円がエンジニアの給料です。上記のように、SES会社の諸経費を差し引いたお金を給料として支払います。その際に半分くらい持っていかれます。単価として受け取ったお金の内訳はこんな感じです。
事業所の家賃
営業経費
事務所経費
役員報酬
営業・総務の給料
全社員の社会保険料
各種積立金
エンジニアの給料
おいおい、どんだけ持っていかれてるんだよ、と思いますが、現実とはそんなものです。ただ、勘違いして欲しくないのが、これらの各種の諸経費はエンジニアが働くために必要な経費なのです。エンジニアは客先で働いており、稼いでいる張本人ではありますが、営業マンが客先に営業しなければエンジニアは働けませんし、総務などの間接部門の作業をやってくれる人がいなければ、サラリーマンとして必要な手続き等をエンジニアが自分でする必要があります。「稼いでいるのはエンジニアだ。エンジニアが偉いんだ。」と思わない方が良いです。そういうスタンスでいると、SES会社内で孤立して、炎上現場か新人でも出来るような安い単価の現場にしか入れてもらえないという残念な結果になる場合があります。
発注元からしたらSESエンジニアは出来るだけ安く使いたい
元請けIT企業からすると、「エンジニアを増やす」ということは「費用が発生する」ということです。工場で例えると、生産性を上げる手段の一つとして「機械を増設」ことが挙げらえます。生産するための機械を増設するということは、機械を新しく購入することなので費用が発生します。エンジニアを発注するということは、機械を増設することと同義なのです。
工場で機械を増設する場合、安くてパワーのある機械を増設することを希望すると思います。元請けIT企業もエンジニアを増やす場合、安くて馬車馬のごとく働いてくれるエンジニアを希望します。単価以上にエンジニアがパフォーマンスを発揮すれば、元請けIT企業は「安い買い物だった」と思うのです。その場合、当初契約した単価以上に払う気はないです。
何故そんなことが起こるのでしょうか?エンジニアのパフォーマンスに見合った単価を支払うべきだと思う方が多いはずですが、考えてみて下さい。工場で増設した機械が想定以上に素晴らしいものだった場合、購入した会社に追加料金は払いませんよね?それと同じです。エンジニアを安く使おうという大前提があるので、基本的にSESエンジニアの単価は上がりません。
元請けIT企業「単価60万円だけど、単価80万円くらい能力があるね。でも追加で払う気は無いよ。安くて能力のあるエンジニアが働いてくれて助かる。」
元請けIT企業がエンジニアを安く買いたたくという現象が日本で起こっているので、エンジニアの単価は上がりません。つまり、エンジニアの給料上がりません。
SES企業は給料を上げる気は無い
以前勤めていたSES企業で、単価70万円の25歳の同僚の給料が25万円でした。それが3年続いき、その同僚は28歳で会社を辞めました。単価に対して給料が上がらなかったからです。3年で単価が75万円まで上がりましたが、給料は25万円から27万円にしか上がらなかったという理由で同僚は退職しました。
元請けIT企業が単価を上げたにも関わらず、SES企業が給料の上げ幅を渋るのには理由があります。先述した通り、単価から色々なお金が引かれてからエンジニアの給料になります。相場としては、エンジニアの単価の50%がエンジニアの給料なのですが、「若いから」という理由を付けて給料の上げ幅を小さくします。
なので、単価70万円の適正給料を考えれば35万円くらいを用意しても良いでしょう。しかしながら、同僚の給料は上がらず、同僚は退職しました。その後、同僚の退職の本音が社内のエンジニア間に流れ、多数のエンジニアが退職することになりました。同じことを他のエンジニアにもやっていたからです。
さて、SES企業が同僚に適正金額の給料を払わない理由はいくつかありますが、明確に言えることは、「給料=費用」なので会社としては払いたくないからです。
単価を上げれば給料は上がる
エンジニアの給料を上げるには単価が上がらないと話になりません。ではどうやって単価を上げるかを紹介します。ここではザックリと説明します。
上流工程に行く
日本のIT企業の悪しき風習で、上流工程に行けば何故か単価は上がります。ポジションがメンバーからリーダーに上がるのが手っ取り早いです。どうやったら上流工程に行けるのかは別の機会に紹介したいと思います。
客先を変える
これも不思議な話で、客先を変えれば微々たるものですが単価は上がります。さらに、業務経歴があれば単価は上がります。もちろん、リーダー経験があればアピールポイントになります。
ただ、前向きな客先変更の場合に限ります。客先が合わなくて客先を変更するというのは営業マンからしても売り込みにくいです。また、客先変更の時期もポイントで、四半期の頭、例えば、1月・4月・7月・10月から客先変更であればOKですが、中途半端な時期だと「こいつ使えないんだな」という先入観があるので単価アップは見込めないでしょう。
まとめ
基本的にエンジニアは単価が上がらないと給料は上がりません。単価以上のパフォーマンスを発揮しても、元請けIT企業が安く買いたたくという日本の風習があるので、上流工程に行くか支払いの良い客先に行くしかないと思います。